司教協議会、国内外の機関・組織、
予防と支援にかかわるNGO・団体、信徒の皆様へ


1. UNAIDS(国連合同エイズ計画)の今年の世界エイズデーでは、「ストップ・エイズ。約束を果たそう」というスローガンであらゆる人々への呼びかけを行いました。特にHIV/AIDSに関する分野で責任ある立場として従事している人々に対しては、この世界的流行の蔓延を今後も永続的に防止し、また特に貧しい国々ですでにこの病気で苦しんでいる人々の看護をし、HIV/AIDS感染の増大をくい止め、減少させるための新たな意識的取り組みを求めました。

2. 教皇庁保健従事者評議会は、他の国内外組織、特にUNAIDSのように毎年エイズと闘うために世界的キャンペーンを繰り広げている組織と共に活動を行っています。それにより、世界的危機をもたらしたこの地球規模の悪に対して、人類全体が同様に力を合わせて立ち向かうことができるのです。2001年、各国政府の代表らがHIV/AIDSとの闘いで、この問題に関する認識を深め、共に立ち向かう決意を宣言したのはとても重要な出来事でした。国際社会からの、この問題に対する堅固で、グローバルで、断固とした反応や反響に応えるために、世界規模でこの問題に対する意識を確認し、政治的参加を促したのです。
3. HIV/AIDSの疫学的状況は、引き続き重要な課題となっています。2005年現在、エイズ感染者の数は4030万人にのぼると推測され、そのうち230万人は15歳未満です。毎年この病気に感染する人の数は増え続けています。2005年だけで490万人が新たにHIVウィルスの感染が認められ、そのうち70万人が15歳未満でした。また、2005年のエイズによる死亡者は310万人で、そのうち57万人が15歳未満でした。HIV/AIDSは世界のあらゆる国々で死をもたらす原因であり続けているのです。
4. その最も効果的な治療法は、HIV/AIDSの感染を避けるための予防をすること、つまり、血液、母から子への感染、そして性的接触という三つの感染経路を認識しておくことです。輸血やその他、感染者の血液に接触することで感染する経路に関しては、現今、明らかに減少傾向にあります。とは言うものの、最も注意が必要なのはこの感染経路、特に輸血に対処する施設や外科手術中の感染なのです。
 母から子供への感染が薬によって強く抑制できるようになったことは神に感謝すべきでしょう。このような感染経路には血清反応が陽性の母体に適した薬物を与えるといった予防策を用いて、特に世界中の国々の公的機関によって対処されるべきです。
 三番目の感染経路−性的接触による感染−は未だに最も重大な問題として残っています。これは性的行為の価値を下げるような、つまり単なる性的快楽を求める以外何の意味も持たないような、一種の汎性欲的な文化によって助長されているのです。このような感染経路に対する抜本的な予防策は、性的行為に対する正しい概念、つまり 完全で絶対的な豊かな愛情表現としての深い意味を知らしめることにあります。このすべてが結婚における排他性にもつながっており、他に類の無い不変的なものなのです。この経路による感染の防止策は家族の絆を強めることにあります。
 これこそが神の掟の第六戒の持つ深い意味であり、性行為によるAIDS感染に対する確実な予防策の支柱となるものです。
5. 多くの国々が直面している社会的、文化的、そして経済的な難題の中には、間違いなく健康面における予防策とその促進が必須とされています。それはすべての人から、特に最も貧しく弱い人々への無条件の愛のしるしであり、それはすべての個人と共同社会からの必要に応じて与えられなければなりません。その結果として、健康面に関する平等な配慮が誰に対しても十分に考慮されないような法律は、改革されなければなりません。健康は本来価値あるものであり、「社会はその責任を負わなければならない」のです。それゆえ、健康は地球に住むすべての人々に対して保証され、研究され続けなければならなりません。それにより、未だに基本的な看護や治療を受けられていない世界の多くの人々が、それらを確実に受けられるようになることで、すべての人の健康状態が一定の標準に達することができるのです。しかしながら、健康を守る権利というものは、それ相応の振る舞い、すなわち健康を守るライフスタイルに従い、それを害するような行動は差し控えるという義務感との調和のもとにあってしかるべきなのです。
6. カトリック教会は、HIV/AIDSの予防および、それに苦しむ患者の看護の両面で貢献し続けています。患者と家族に対し医療と援助の手を差し伸べるばかりでなく、社会的、精神的、また霊的指導レベルでのお手伝いをしています。世界のHIV/AIDSに関するケアを供給している施設のうち26.7パーセントがカトリック関連の施設です。各地の教会、宗教施設や信徒団体は非常にたくさんの事業やプログラムを主催しています。それらはHIV/AIDSに対する訓練や教育、予防や支援、病者に対する介護や精神面で患者を支えるための付き添いなどであり、それらは愛と責任感と慈愛の精神をもって行われています。
7. エイズに関する実務面での活動を、世界各地の教会やカトリック施設から届く情報によって分類すると次のようになります。:エイズ啓発キャンペーンの促進、予防と健康教育のプログラム、親を亡くした子どもたちの支援、医薬品と食料の配布、在宅看護、病院や施設の建設、HIV/AIDSの患者たちが治療と援助を受けながら自らの仕事に集中できる治療コミュニティー作り、政府との協力体制、刑務所内でのケア、要理コース、インターネットを通じた援助のシステムの作成、病者のための支援グループの設立などです。このように非常に貴重で賞賛に値する努力と並行して、教皇ヨハネ・パウロ2世は2004年9月12日に「よきサマリア人」基金を作られました。それは教皇庁保健従事者評議会に委託され、後に教皇ベネディクト16世によって承認されています。この基金に寄せられた多くの寄付金は世界で最も困っている病者、特にHIV/AIDSの犠牲者たちへの経済的支援となっています。基金の初年度の活動で最も意義深い財政援助として購入された医薬品は、アメリカ、アジア、アフリカ、ヨーロッパの各地の教会に送られました。
8. 様々な分野でHIV/AIDSとの闘いに取り組んでいらっしゃる方々に対して、今後の取り組みに関する提言をさせていただきたいと思います:
 キリスト教共同体に対して−これからも、性的な行為は神から与えられた優しさに満ちた子孫繁栄のための献身的行為であるという正しい理解のもとに子供たちを教育し、安定した家庭を築くように勤めていただきたい。
 政府に対して−国民全体の健康管理とエイズ患者のための里親ケアを、責任感、連帯感、正義感、そして公正さをもって促進していただきたい。
 製薬業界に対して−HIV/AIDS治療用の抗ウィルス剤や、日和見感染症を治療する薬が安価に入手できるようにしていただきたい。
 科学者と医療従事者に対して−この現象を止めることのできる新しい効果的な医薬品を見つけるためにお互いの結束をさらに深め、HIV/AIDSの生物医学的な研究を進めるためのあらゆる努力をしていただきたい。
 マス・メディアに対して−大衆に対して宣伝や売込みといった方法ではなく、この現象とその予防法に関する、透明で、正しい、事実に基づいた情報を提供していただきたい。
9. 最後に、教皇ベネディクト16世が2005年6月10日のアド・リミナ訪問の際に南アフリカの司教に対して述べられたお言葉で結びたいと思います。『敬愛なる司教の皆様、私はエイズとそれに関連する病気に起因するこの惨状に対して心からの懸念を表します。特にこの悲惨な伝染病によって人生を損なわれてしまった、夫を亡くした人、親を亡くした子、若い母親たちのために祈りを捧げます。人々の命を奪うだけでなく、アフリカ大陸の経済的、社会的な安定をも脅かすこのウィルスと、これから先も闘う努力をし続けるように強く望みます。』

ハビエル・ロザーノ・バラガン枢機卿
教皇庁 保健従事者評議会 議長
(カリタスジャパン試訳)
 
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