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カリタスジャパンニュース
連算発行番号 Caritas Japan News No.257


巻頭言 忘れ得ぬ聖週間
カリタスジャパン担当司教 菊地功 


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難民司祭司式で行われたビラバ教会の復活祭

 祭壇前へと進み出た母親たちの目には、どことなく落ち着かない不安と、命をいとおしく思う愛情が満ちあふれていました。
 1995年4月16日の朝、世界中でそうであるように、コンゴ(当時はザイール)東部の町ブカブの郊外にある「ビラバ」という小さな村でも、教会では復活のミサが捧げられていました。幼い子どもたちの洗礼式も挙行されました。世界中の他の教会と多少異なっていたのは、司式していたのが「難民司祭」であったことでしょうか。すなわちそこは、200万人を超えるといわれたルワンダ難民キャンプの一つに隣接する教会だったのです。
 ビラバの難民キャンプには、約一万人が収容されていましたが、その大多数を占めるカトリック信者が、聖堂に入り切れないほど大勢集まって、洗礼を受ける子どもたちを見つめていました。やはりどことなく落ち着かない不安と、命をいとおしく思う愛情が、その目には満ちあふれていました。数日前に、暴力的に命が奪われる恐怖を味わった人たちにとって、洗礼式は命の尊さを十分に感じさせるものだったのでしょう。
 その数日前、4月11日、私は銃撃の音が途絶えた後に、真夜中の難民キャンプを歩いてクリニックへ向かいました。そのときそこここで耳にした、うめき声やすすり泣く声を、生涯忘れることはありません。難民たちは、もともと物静かな人たちです。普段でも大声で騒ぎ立てることをしません。銃撃戦があった直後とは思えない異様な静けさが、その場を支配していました。
 カリタスジャパンは国際カリタスの委託を受けて、ビラバキャンプのクリニックを手伝っていました。クリニックの真っ白なテントの中に足を踏み入れて、思わず息をのみました。そこはもう医療現場ではない。なんと死体置き場になっていたのです。むしろにくるまれて投げるように横たわっている少女は、もちろんすでに息絶えています。その証拠に彼女の頭の左半分が吹き飛ばされていました。大地に彼女の真っ赤な血が、まだぶくぶくと泡を立てて流れていました。彼女の向こうにも血を流した遺体が、すでにいくつも運び込まれていました。事態が飲み込めずに、しばらく呆然と眺めていたことを覚えています。そのとき左手に持ったトランシーバーから、力強い日本語が流れてきました。「そっちはどうなってますか?」当時、ブカブに本部を構えていた、日本のあるNGOのスタッフの声でした。

ビラバキャンプは湖沿いにあり、ブカブの町からは銃撃が湖上の花火のように見えたといいます。もちろん現場は、そんな悠長なことを言う状況ではありません。
 怪我人は、クリニックではなく、近くの地域開発センターへ運び込まれていました。そちらへ向かって足を一歩踏み入れると、修羅場でした。怪我人がベランダにまであふれている。すすり泣く人、うめき声を上げる人、呆然としている人。電気がないので医療スタッフが頼りにしているのは、懐中電灯の明かりだけでした。カリタスジャパンのスタッフであるシスターが私を見つけて、何も言わず懐中電灯を差し出してきました。彼女の足元には背中からおしりにかけて撃たれた青年が、横たわっています。「ここを照らして」といわれる方向に明かりを向けると、血が湧き出ている傷口。そこに彼女はぐいぐいと指を入れ、入り込んだ弾を抜こうとしているのです。一段と高まるうめき声。もちろんその場に麻酔なんてありません。しかもキャンプ唯一の薬品倉庫は、襲撃の最後の仕上げにロケット砲で吹き飛ばされていたのです。薬すら十分にありません。1995年の聖週間は、苦しみと悲しみと恐怖の聖週間でした。あの日の二時間に亙った銃撃と砲撃の音が、私の脳裏を離れる事は決してありません。 
 アフリカ各地で頻発する地域紛争は、果たして正規軍が関与しているのかどうかすら定かではないゲリラ戦の様相を呈しており、その現場では国際法を遵守するなどと言う理性は存在しません。なぜ攻撃されるのか、どうして自分が命を奪われるのか、全く理解できない理不尽な現実の中で、多くの市民が命を奪われていくのです。「戦争」はかつてのような、国同士の正規軍による宣戦布告を伴った闘いではもうあり得ず、予測もつかない仕方で発生する数多くの小規模武力衝突や攻撃の寄せ集めと化しつつあります。戦闘の発展性は予測が難しい分、非戦闘員の被害が拡大していくのです。あの日見た小さな地獄絵図を、忘れることはできません。
 あの聖週間の時、ビラバの教会で人々は、自分たちの苦しみをイエスの苦しみに重ね合わせて、心から感謝を込めて聖金曜日の十字架に接吻したのです。そして復活の日曜日、命を長らえた人々は、その日、神に与えられた命があることに感謝しながら、新しい命である幼い子どもたちの晴れの姿に、心から歓喜したのです。カリタスの活動を通じて、子どもたちが安心して成長できる世界づくりに貢献したいと心に誓った聖週間でした。
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子どもたちの洗礼式に進みでた母親たち

     
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