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「貧困削減目標実現の危機と、取り組みの必要性」G8サミットに向けた、国際カリタスとCIDSEの声明文

 国際カリタス及び、CIDSE(開発と連帯のための国際協力連盟)は、開発と緊急支援に積極的に取り組む2つの主要なカトリック国際機関です。世界中にいるわたしたちのメンバーと提携団体は、開発の進展と後退の両方を目の当たりにしています。多くの賞賛すべき進展がある一方で、あまりにも遅い変化に、深く失望させられる地域が非常に多いのも事実です。こうした現実を鑑みて、わたしたちはG8諸国首脳に対して、今までのサミットでG8諸国が約束してきた支援の公約を思い起こし、世界の貧困を半減させるべく前進するのに不可欠な政策を承認し実行するよう求めます。
 2000年にミレニアム宣言が国連総会によって承認され、ミレニアム開発目標が採択されたことは国際開発の世界において画期的な出来事でした。国際社会が初めて、支援物資の量だけでなく結果も強調しつつ、共に活動する目的について合意に達したのです。2015年までに達成すべき8つのミレニアム開発目標には、政治的取り組みにおける課題が明瞭に示されています。貧困は膨大で複雑な問題であり、資金援助の増額と、資源を効率的に国内流通させる対策によって対応する必要がありますが、ミレニアム開発目標だけで適切に対応しきれるものではありません。しかし、ミレニアム開発目標は、それらがもし達成されれば、世界の最も貧しく弱い立場の人々の生活が大きく改善されるという目標を明確に示しています。
 G8諸国のカトリック司教協議会はG8首脳宛に手紙を送り、開発と気候変動に関して深い懸念を表し、支援国は途上国とその国民に希望を与えるような対策を至急とるべきであると記しました。今回の、わたしたち国際カリタスとCIDSEによるこの声明文は、G8サミットでこれまで約束されたことと、実行されるべきことを詳細に記しています。ですから、司教協議会からの手紙の補足的なものと言えます。
 ミレニアム宣言が採択されてから7年6ヶ月が経った現在、わたしたちは目標の達成期限である2015年にむけた中間点にいます。そして、目標を達成できそうにない国があまりにも多いことは明白です。現在のペースで取り組みを続けるならば、目標を達成するまで100年以上待たなければならないケースもいくつかあります。原因はいくつかあります。支援国側にも原因があります。また、対応がより難しいのが途上国自身の側にある原因です。すなわち、政府がまったく、最貧層の国民に手を差し伸べる能力と意欲を持っていないのです。そして、非常に多くの国で、紛争によって開発が何十年分も後退しています。
 ここでわたしたちが懸念するのは、支援の量と質の問題と、支援国の責任の問題です。2000年以降、支援国首脳は幾度となく集い、ミレニアム開発目標実現に必要な支援を提供するために真剣に取り組んできました。途上国側においても、政府がその支援を貧困削減のためにしっかりと有効利用するよう努めてきました。

開発支援
 世界の開発のための支援総額は、2004年には年額750億米ドルまで増加し、過去最大となりました。2005年、欧州連合(EU)は対国民総所得(GNI)比における開発支援額の目標値0.56%を2010年までに達成し、2015年までに0.7%を達成すると誓いました。2005年のグレンイーグルズサミットでは、こうしたヨーロッパ諸国のコミットメントが繰り返し述べられました。しかし、4年経った現在、EU主要支援国の中には、軌道から大きく外れている国がいくつかあります。2007年のEUの開発援助額は620億9500万米ドル(対GNI比0.40%)で、その内の69億4900万米ドルは債務帳消し分でした。この債務帳消し分を差し引いたEUの援助総額は551億4600万米ドルで、その対GNI比は0.36%です。
 国際社会全体の支援総額は、2005年から2006年までの間に5.1%減少し、その後、2006年から2007年までの間に8.4%減少しています。しかしながら、最近の欧州委員会(2008年6月19、20日)で、メンバー諸国が2005年の約束について再び取り上げたことは、評価すべきでしょう。こうした状況の中で、メンバー諸国がどのようにして公約実現のために取り組んでいくのか、そのはっきりとした段取りを示すのをもどかしくも待っています。
 G8諸国は、2010年の目標に向けて勢いを取り戻す必要に迫られています。これらのコミットメントの根底にある前提とは、援助は貧しい人々の生活を実際に変えられるということ、また、援助はミレニアム開発目標達成のためのどんな戦略においても主要な要素であるということです。この前提は、市民社会にも政界にも同様に受け入れられています。実際、非常に多くの国々の政府が、真剣に貧困削減に取り組み、自らに託された支援を有効に活用できることを示してきました。それらの国々で開発が進行中であることを称えたいと思います。
 2008年の時点で、2002年と2005年の公約が未履行であることを思い起こすように、支援国に再度書き述べなければならないのは残念なことです。ミレニアム宣言は、国際社会、特に富裕層が、世界の貧しい人々のために行った唯一の公約です。しかし今、その宣言が現実には無意味な言葉となってしまう危険があります。非常に多くの途上国の人々が、富裕諸国の関心に対してすでに不信感を抱いていますが、こうした状況はその不信感をさらに増大させるだけでしょう。

支援の質
 支援として提供される資源の質の問題も忘れてはなりません。もし、支援国が支援を受ける人々の意向に反して、または彼らの同意なしに条件を課することがあれば、支援国の意向がどんなものであろうとも、支援は非効率的、さらには非生産的になってしまうでしょう。またもし、支援国が自国を本拠地とする企業を通しての支援にこだわるのであれば、またもし、被支援国のニーズ状況を無視して支援国が援助の使いみちに厳しい制約を課するのであれば、同様の結果を招くことになるでしょう。例えば、支援国においてHIV/AIDSの問題に関する主張が、いかに注目を浴び、その流行をくい止め対処するための資源を増大させてきたかを考えて見ましょう。支援国がHIV/AIDSだけにひたすら焦点をあててきた結果、支援のHIV/AIDSへの割り当て額が国家医療予算総額を上回ってしまった被支援国がいくつもあります。そして、被支援国政府がHIV/AIDS対処資金を、同様に緊急措置が必要な医療ニーズにあてることは、許されていません。

債務帳消しと責任ある貸与
 G8諸国は、最貧国の債務負担を軽減するために特に尽力してきました。そうした取り組みにより、最貧国政府が開発投資に資源を使う道が開かれてきました。しかしながら、債務は、その新旧にかかわらず、また契約されたのが国外か国内かにかかわらず、多くの貧しい国にとっていまだに大きな障害となっています。債務帳消しをさらに押し進め、責任ある融資の枠組みに関する国際協定を設けることは、ミレニアム開発目標達成にむけて一致団結した地球規模の取り組みを行なう上で、大きな役割を担うこととなるでしょう。

食糧危機
 また同時に、最近の食料危機がミレニアム開発目標達成のための他の取り組みを阻み脅かしています。国際貿易政策を大幅に変える必要があります。それと同時に、主に途上国における小規模な持続可能な農業に焦点を当てた、農業と農村部の開発投資拡大のための具体的対策を設ける必要もあります。

対テロ戦争
 援助、債務帳消し、開発政策全般が不足していることを、なお一層懸念させる変化が他にも起こっています。いわゆる「対テロ戦争」とイラクとアフガニスタンでの紛争は、開発よりもはるかに多くの資源を消費し、支援国の開発支援へのアプローチに影響を与えつつあります。

気候変動
 わたしたちは今、気候変動によってもたらされる問題も痛感しています。ミレニアム宣言の中には触れられていませんでしたが、気候変動はほとんどのミレニアム開発目標に悪影響を及ぼすでしょう。わたしたちは、国際社会が気候変動に関心を持っていることを嬉しく思うとともに、温室効果ガスの大気圏への排出削減にむけたコミットメントを協議する意思を歓迎します。しかし、この問題もその進展が先進国にかかっています。先進国は自国の排出量を大幅に確実に削減するという誓いを立て、実行することによって主導的役割を果たさなければなりません。
 不規則に起こる干ばつと降雨、異常気象などの気候変動は、途上国に住む貧しく弱い人々に、最初に、そして最も激しく影響を与えます。こうした人々は、気候変動の原因となる排出の責任をほとんど負う必要のない人々です。人道支援が支援国援助の中で占める割合がすでに増えつつありますが、気候変動の影響が出始めるにつれ、気候が関わる災害における緊急支援もますます必要になるでしょう。こうした新たな脅威に対応するには、途上国が緊急事態に対応し気候変動に適応するのを助けるための追加支援が必要です。しかし、支援国社会は、追加支援を新たに増加するよりむしろ、開発資源として約束された枠内から転用してしまう恐れがあります。このため、わたしたちは支援国政府に対して、途上国が気候変動に対応するための支援は、開発と貧困削減のための支援に追加されるものであることを保証するよう要請します。さらに、それらの追加支援が、国連気候変動枠組条約の枠内で提供されるよう求めます。

 最後に、G8諸国首脳の健康を願い、会議の成功をお祈りします。世界を脅かす貧困、危険な気候変動、不安定さなどの問題に各国首脳が対処するにあたり、世界の貧しい人々とわたしたちは、知恵と連帯と先見性を期待しています。

2008年6月25日

オスカル・アンドレス・ロドリゲス・マラディアガ枢機卿
国際カリタス総裁

リネー・フローテンホイス
CIDSE代表


CIDSE - Rue Stévin16, 1000 Brussels, Belgium - Tel: +32 2 230 77 22 - Fax +32 2 230 70 82 -
Email: postmaster@cidse.org - Web: www.cidse.org
CIDSEはヨーロッパと北アメリカの16のカトリック援助団体による連盟です。
国際カリタス− Palazzo San Calisto, Vatican City State, 00120 − Tel +39 06 698 79 725 −
Email: Nicholson@caritas.va − Web www.caritas.org
国際カリタスは、人道支援、社会貢献事業、包括的人間開発に取り組む、162ヶ国のカトリック組織の統轄機構です。
 


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